「ドライバー派遣を頼みたいけれど、法律に違反しないか不安」——そう感じている企業担当者は少なくありません。実際、ドライバー派遣は便利な一方で、運用を誤ると労働者派遣法違反に該当してしまうケースがあります。違反すれば、派遣元だけでなく派遣先である自社にも行政指導や契約停止といったリスクが及びます。
特に、依頼を検討する段階で次のような疑問や不安を抱える担当者は多いです。
- 事前面接は本当に禁止なのか?どこまで確認してよいのか知りたい
- 二重派遣・偽装請負など、知らないうちに違法行為をしてしまわないか不安
- 派遣先としてどこまで指示してよいのか、線引きが分からない
結論から言えば、禁止事項さえ正しく押さえておけば、ドライバー派遣は安心して活用できます。むしろ、これらを理解しないまま運用するほうがリスクは大きくなります。この記事では、ドライバー派遣で「やってはいけない」禁止事項と法的リスクを整理し、実務で起こりやすいトラブル例と防止策まで具体的に解説します。依頼前にこの記事を読んでおけば、契約や運用で迷うことはなくなるはずです。
ドライバー派遣の禁止事項とは?法律違反を防ぐポイント

ドライバー派遣は、物流・ルート配送・送迎など多様な場面で活用されています。ただし、派遣先企業が知らないうちに“違法運用”になってしまうケースが多い領域でもあります。
特にトラックドライバーや送迎ドライバーは運行管理・安全管理が厳しく、指揮命令系統の誤りや契約外の運用が、そのまま法令違反につながりやすいのが特徴です。
この記事では、こうした禁止事項を「何がOKで、何がNGなのか」が一目で分かるように整理していきます。コンプライアンスを守りながら安全にドライバーを活用したい企業様の、依頼前の判断材料としてご活用ください。
ドライバー派遣で禁止されている行為とは?

ドライバー派遣は「自社の社員ではない人を、自社の指揮命令で働かせる」という仕組みです。そのため、誤った運用をすると労働者派遣法違反に該当します。特に運転業務は安全性が強く求められるため、派遣先企業には高度なコンプライアンス理解が必要です。
ドライバー派遣に適用される「労働者派遣法」の基本
労働者派遣法では、次の三者の関係が明確に定義されています。
- 派遣元(派遣会社)
- 派遣先(企業)
- 派遣労働者(ドライバー)
そのうえで、派遣先企業が行ってよいことと行ってはいけないことが、それぞれ明確に定められています。

派遣先企業が行えること
- 日々の具体的な運行指示
- 業務内容(配送ルート・積み荷など)の説明
- 安全運転上の指示
派遣先企業が行ってはいけないこと
- 採用選考に該当する行為(面接・試験など)
- 契約外の業務命令
- 勤怠・給与・評価などの「雇用管理」
この線引きを誤ると、後ほど解説する「事前面接禁止」や「偽装請負」に直結します。まずは、派遣先が関与してよいのは“日々の業務指示まで”で、“人選や雇用管理には踏み込めない”と覚えておきましょう。
なぜドライバー派遣は法律遵守が特に重要なのか
ドライバー派遣が他職種より厳しく運用されるのには、運転業務ならではの理由があります。
- 事故が発生すると派遣先の責任が重くなる
- 法律違反があると運輸局・労働局からの行政指導に発展しやすい
- 労務管理が適切でないと2024年問題にも抵触する
派遣ドライバーは「安全運行」「雇用管理」「派遣法」の3つを同時に守る必要があるため、禁止事項の理解が欠かせないのです。逆に言えば、ここを押さえている派遣会社を選べば、リスクの大半は回避できます。
事前面接が禁止されている理由
ドライバー派遣の禁止事項の中で、最も抵触しやすいのが事前面接の禁止です。
多くの企業が「現場に合う人か事前に確かめたい」と考えますが、これは派遣法上の選考行為にあたり、違法となります。依頼を検討する段階で、ここはぜひ押さえておきたいポイントです。
派遣先が行ってはいけない選考行為
労働者派遣法では、派遣先による派遣労働者の特定行為が禁止されています。具体的には、派遣先は次のような行為を行ってはいけません。
- 面接
- 適性検査
- 運転テスト
- 履歴書提出の要求
- 個人の評価につながる質問
派遣先が人選に関与すると「採用行為」とみなされます。派遣は“人選のプロである派遣元が適切な人材を選ぶ”という制度設計のため、派遣先が選考に踏み込むことは認められていません。
法律上許されている“事前情報の提供”の範囲とは?
とはいえ、派遣先が事前にまったく情報を得られないわけではありません。次のような情報であれば、事前に共有を受けても違反にはあたりません。
- 運転経験(車種・年数)
- 資格(中型・大型・フォーク等)
- 過去の業務実績
- 事故歴の有無(個人情報の範囲に注意)
- スキルシートの提供
つまり「どんな人物か面接で見極める」のはNGでも、「どんなスキル・経験を持つドライバーか」を派遣元から共有してもらうことは問題ありません。必要な人材像は、派遣会社にしっかり伝えれば対応してもらえます。
違反した場合に起こり得るトラブル事例
事前面談をめぐって、実際に起こりやすいトラブル例を紹介します。
事例①:面談を行った結果、労働局から是正指導
派遣先の担当者が「安全確認のために一度会いたい」と事前面談を実施。
→ 労働局から「選考行為」と指摘され、改善指導を受けた。
事例②:運転テストを要求し、偽装請負と判断
派遣元の関与なしに派遣先が運転テストを実施。
→ 労働者派遣法違反として行政指導。
事例③:派遣ドライバーを“不合格”にしてしまう
不合格扱いは採用選考にあたり、派遣制度の趣旨に反する。
いずれのケースも、意図が善意であっても違法と判断されます。「念のため会っておきたい」という気持ちは理解できますが、事前面談は避けるべき禁止事項です。人材の質に不安がある場合は、面談ではなく派遣会社への要望共有で解決しましょう。
二重派遣の禁止
二重派遣も、ドライバー派遣で知らないうちに違法になりやすい項目の一つです。
二重派遣とは?「請負の下請け」との違い
二重派遣とは、「派遣元から派遣された労働者を、派遣先とは別の企業の指揮命令で働かせること」です。これは法律で明確に禁止されています。
請負やアウトソーシング企業に派遣 → 実際には別の会社の監督下で働いている
というケースが二重派遣にあたります。派遣先以外の第三者が指揮命令を行っている時点で違法です。
物流現場で発生しがちな“二重派遣の例”
ドライバー派遣では、次のようなケースが起こりがちです。
例①:派遣先(倉庫)を経由した他社(運送先等)による指揮命令
運送・倉庫会社へ派遣されたドライバーに対し、派遣先企業の社員ではなく、荷主や配送先などの別企業の社員が直接、運行ルートや作業の指示を出すケース。これは派遣先企業が指揮命令権を第三者に委ねていることになり、二重派遣に該当します。
例②:派遣元が別の会社へ“横流し”
自社で受け入れた派遣スタッフを、自社の業務に従事させず、そのまま別の協力会社や下請け企業へ「助っ人」として送り出す行為です。これは「労働者供給事業の禁止」に抵触する明確な違法行為であり、送り出した側・受け入れた側の双方が罰則(懲役や罰金)の対象となる、極めてリスクの高いケースです。
二重派遣が発覚した際の企業リスク
二重派遣が発覚すると、以下のようなリスクが伴います。
- 行政指導
- 労働者派遣法違反による契約停止
- 派遣元への損害賠償
- 労災発生時の責任の曖昧化
特に事故が発生した場合、「誰が安全管理責任を負うのか」という重大な問題に発展します。指揮命令の経路をシンプルに保つことが、最大の予防策です。
偽装請負との違い
二重派遣とよく混同されるのが偽装請負です。
偽装請負とは、請負(業務委託)契約と見せかけて、実態は派遣と同じ指揮命令を行うことを指します。特にドライバー業務は“運行指示を誰が行うか”が問題になりやすく、知らずに偽装請負となるケースが起こります。

なぜドライバー業務で問題が起きやすいのか
本来、請負契約は次のような体制で運用されるのが一般的です。
- 指示命令は請負業者が行う
- 業務の完成責任を請負業者が負う
- 労務管理も請負業者の責任
ところが、次のような運用になると偽装請負に該当します。
- 派遣先企業が運行ルートを指示
- 休憩時間や実施手順を派遣先が指示
- 派遣先の社員が毎日業務内容をコントロール
つまり、“運転業務を外注したつもりが、実態は派遣と同じ”という状態です。日々細かく指示を出したいなら、最初から派遣契約を結ぶのが正解です。
ドライバー業務で偽装請負が発生しやすいケース
以下は、実際の物流現場で起こりやすい例です。
例①:請負業者がドライバーを手配 → 企業担当者がドライバーに直接指示
請負契約であっても、指示命令を企業側が行うと偽装請負にあたる。
例②:荷物の積み方・温度管理・配送順まで細かく指示
請負は“完成責任型”のため細かい指示は不可。指示が必要な場面では、本来は派遣契約を結ぶ。
例③:請負会社の管理者が常駐せず、企業側が代わりに管理
管理者不在は偽装請負と判断される典型例。
偽装請負と判断された際の企業リスク
偽装請負は法律違反であり、発覚すれば企業への影響は避けられません。具体的には次のようなリスクがあります。
- 労働局からの是正指導
- 労災事故発生時の責任増大
- 企業ブランドの毀損
- 社内監査・取引先監査での指摘
ドライバー業務は事故リスクが高いため、「安全管理責任の所在」が曖昧になる運用は特に危険です。契約形態に迷ったら、自己判断せず派遣会社に相談するのが安全です。
派遣先企業に義務付けられる項目
派遣法違反の責任は、派遣元だけでなく派遣先にも及びます。ここでは、ドライバー派遣を利用する企業が最低限理解しておくべき義務を紹介します。依頼前に把握しておけば、契約後に慌てることはありません。
派遣先管理台帳の作成義務
派遣先企業は、派遣労働者ごとに次の項目を記録した管理台帳を作成する必要があります。
- 氏名
- 従事した業務内容
- 派遣期間
- 指揮命令者
- 労働時間
この管理台帳は3年間の保存が義務付けられています。怠ると行政指導や改善命令の対象になるため、注意が必要です。
労働時間管理・安全運転管理の遵守
ドライバー業務では、一般的な労働時間管理に加えて「自動車運転者の改善基準告示」の遵守が必須です。具体的には、次の項目が細かく定められています。
- 拘束時間
- 連続運転時間
- 休憩時間
- 休息期間
派遣先は、これらに違反が生じないよう運行指示を行う必要があります。2024年問題以降、この点は特に厳しく監督されています。
派遣契約書で明記すべき項目
契約書には、以下を必ず明記します。
- 業務内容(運転業務/積み下ろしの有無)
- 車両の種類・装備(MT/AT、パワーゲート等)
- 指揮命令者
- 労働時間・休憩
- 必要な資格(中型・大型・フォークリフト等)
- 危険作業の有無
契約内容が曖昧だと、“契約逸脱トラブル”の原因になります。逆に、ここを丁寧に詰めてくれる派遣会社なら、安心して任せられます。
指揮命令系統の注意点
派遣法の中でも重要なのが指揮命令権です。
ドライバー派遣は「派遣先が日々の業務指示を行う」仕組みですが、その範囲を誤ると違法になります。
派遣先が行える指示の範囲
合法な指示内容
- 配送ルートの指示
- 積み荷情報の説明
- 安全運転上の指示
- 当日のスケジュール共有
これらは業務指示の範囲とみなされ、違法性はありません。
違法となる指示内容
- 給与・勤怠の評価や減点
- 配置転換・懲戒指示
- 契約外の付帯作業の強制(倉庫作業など)
- 違法な長時間労働の指示
指揮命令の逸脱は、偽装請負や派遣法違反に直結します。「業務の指示」までならOK、「雇用や処遇への介入」はNG、と整理しておくと判断しやすくなります。
現場で起こりがちな指示トラブル例
例①:倉庫作業を“ついで”にお願いしてしまう
契約に明記していない場合、違法。
例②:別部署の社員が指示を出してしまう
指揮命令者が限定されているため、違法。
例③:休憩を取らせない
改善基準告示違反となり、派遣先の責任は重い。
ドライバー派遣の法律リスクを防ぐためのチェックリスト

ここまでの禁止事項を踏まえ、実務で運用する際の注意点をチェックリストにまとめました。依頼前・契約前にこのリストで確認しておけば、大きなトラブルはほぼ防げます。
契約前に確認すべき項目
- 業務内容が契約書に正確に記載されているか
- 積み下ろしなど付帯作業の範囲は明確か
- 指揮命令者が特定されているか
- 必要な免許・資格が明記されているか
- 請負ではなく派遣契約が適切か
稼働開始後に注意すべき項目
- 契約外業務を依頼していないか
- 別部署の社員が指示を出していないか
- 労働時間管理が適切か
- 休憩が確保されているか
- 派遣会社と連携してトラブルを共有しているか
派遣元・派遣先で事前に決めるべきルール
- 連絡経路(緊急時の対応)
- 追加業務の判断基準
- 荷扱いのルール
- 安全運転に関する指示権限の整理
- 勤怠状況の共有方法
チェックリストを見て、自社の運用が禁止事項に当たらないか判断がつかない項目はありませんでしたか。
アズスタッフは派遣元として、指揮命令の範囲や契約形態の整理からご相談を承ります。現在の運用内容を伺えば、法令に沿った手配方法をご提案します。
禁止事項を理解して、ドライバー派遣を安全に活用しましょう
ドライバー派遣には、知らないと違法になってしまう禁止事項が多数あります。しかし裏を返せば、ポイントさえ押さえれば、業務を効率化できる心強い選択肢になるということです。最後に、押さえておくべき要点をおさらいします。
- 事前面接をしない
- 二重派遣を起こさない
- 請負と派遣を混同しない
- 契約内容を曖昧にしない
- 管理台帳や労務管理を適切に行う
これらを守れば、ドライバー派遣は企業にとって非常に有用な手段になります。
特に、安全運行とコンプライアンスが最重要となる運送・物流領域では、法令遵守を徹底している派遣会社を選ぶことが、最大のリスク管理策となります。
「自社のケースは大丈夫だろうか」と少しでも不安があれば、依頼前に派遣会社へ相談しておくのが安心です。安心して任せられるプロの派遣会社と、安定した運行体制を構築しましょう。



